戦後７７年が経ちました。あの無謀で悲惨極まりない戦争により、戦地で戦った人たちが、そして「銃後」を守るために艱難辛苦を強いられた人たちが、その実相を語る機会はあと数年しか残されていません。
遅きに失した感はありますが、何としても戦時体験を当事者から聞いておきたい、そして記録として残し、戦争を知らない世代に伝えていきたい。そう強く思いました。

きらくえんの理念「ノーマライゼーション」は第二次世界大戦でナチスドイツに抗したデンマークのバンク・ミケルセンの強制収容所での体験から生まれています。
すべての人が人間として普通に生活できる社会、言い換えれば平和な社会を、と願う理念です。

この「いのちの足音」はこのような思いで、きらくえんに入居している高齢者の方々や在宅福祉サービスを利用している高齢者の方々に戦時体験を語っていただいた記録集です。編集にあたっては、兵庫歴史教育者協議会の上野・大木・山内の３先生方のお力を借りて高齢者が話された内容を徹底して検証し、まとめました。そのため２０１８年のスタートから、４年もかかってしまいましたが、このほどようやく発刊することができました。ご一読いただければ幸いです。

時あたかもロシアが突如ウクライナに侵攻し、戦争が始まりました。あろうことか科学兵器や核兵器の使用も現実に起こりかねない恐ろしい事態となっています。
戦争のない恒久平和を世界で実現する小さな一歩として、太平洋戦争を学び、思いを共有できれば大変嬉しく存じます。

２０２２年４月１日
社会福祉法人きらくえん
名誉理事長　市川　禮子